開催概要
2024年3月3日(日)、大阪府枚方市の先生シェアハウス「わいが舎」で、現役教員と会社員が一緒になって「キャリア教育を語る会」を開催しました。
この会は、フィンランドのキャリア教育の取り組みと、日本の大学生の就活事情を元に日本の中高生に必要なキャリア教育の方向性を現場の先生方と会社員の力を結集して考えていく最初のステップとして、枚方市の中学校教員である岡勇太郎さんと、きっかけ株式会社で協力して実施させていただきました。
また、株式会社わけわけが運営する先生シェアハウス「わいが舎」を開催場所として利用させていただきました。シェアハウス住民の皆様も含め開催にご協力いただきました皆様本当にありがとうございます。
このイベントでは、2023年8月に代表の黒田が見てきたフィンランドの現地の教育視察経験と、国内の就活支援団体に携わっていた時代の知見を融合させて、実際に日本の学校でどうキャリア教育を進めるて行けばいいのかについて深く掘り下げました。参加者の皆様で教育現場の現実と理想のギャップをどう埋めるかについて具体的なアイデアを共有し、自分たちの学校でのキャリア教育プログラムを考えるためにまずは何から始めるのかを考えていくきっかけになったと考えています。
短時間のセッションでしたが、さまざまなバックグラウンドの参加者からの意見と現場の先生が抱える生の課題を融合させることで、キャリア教育の定義や新しい展開方法、実施ステップについてのアイディアが複数出てきていました。
先生方からはこの会話を学校の”外”ではなく、職員室の”内”でやらないといけないと感じたという風に言っていただき、キャリア教育を考えるとっかかりとして非常に良い機会が作れたのではないかと考えています。
本記事では、そんな「キャリア教育を語る会」の様子と、そこで得られた学び、皆様のチャレンジを紹介していきます。
イベントの流れと主な内容
アイスブレイクセッション
参加者同士の親睦を深めるためのアイスブレイク。 会場までの道のりの時間順に声を出さずに並ぶというもので、自己紹介をかねて実施しました。
イントロダクション
本イベントのテーマは「フィンランドのキャリア教育と日本の大卒就活から中学高校におけるキャリア教育とは何かを考える」でした。
このテーマは、主催者である岡先生が現場で感じているモヤモヤとして「キャリア教育とは何かというものが先生たちの中で定まっていないこと」があり、それを具体化していくための最初のステップとして、「参加者の皆様にとっての”キャリア教育”の解像度が高まり、次に何をやりたいかが決まっている状態」が必要なのではないかというお話から設定されたものでした。
INPUT1: フィンランドのキャリア教育
フィンランド現地に赴き、現地の学校訪問やフィールドワークによって得た現地の教育システムやキャリア教育の進め方について解説しました。具体的な教育プログラム、職業専門学校での学び、学生や社会の価値観、キャリア教育を支える学校制度、学生へのアプローチ方法について共有させていただきました。参加者からは多くの質問もいただき、非常に興味深く聞いていただきました。
INPUT2: 日本の大学生就活のリアル
次に、大学生向けの就活支援団体での経験を元に、大学生の就職活動の現状と、就活時に求められる自己理解や企業理解、スキルやマインドセットについて共有させていただき、中高生のキャリア教育との共通の課題として、就活では選考対策、中高生だと受験対策という「選んでもらう」フェーズを起点にキャリアを考えてしまっている人が多いのではないかという問題提起をさせていただきました。どちらについてもその手前にある「自分を知る」「選択肢を知る」といったフェーズをしっかりと生徒や学生が実行できるようにすることが重要なのではないかと考えています。
OUTPUT: キャリア教育を語るグループワーク
最後に、お待ちかねグループワークセッションです。参加者は2つのグループに分かれて、自らの学校や地域でのキャリア教育の理想像と、課題、その課題に対するアクションを話し合いました。このワークショップでは、前半パートで受けた2つのインプットを元に、具体的なアクションを想定した時に乗り越えるべきハードルを意識して現実的に実行できそうなプランを描くことを目指しました。さまざまな立場の方が集まっていただいたことで、各グループからは創造的かつ、学校現場での課題を踏まえた具体的なアイディアが生まれていました。
このセッションを通じて、参加者はキャリア教育の新しい理解と、それを自分たちの環境にどう適用するかの具体的なファーストステップとして何をするのかを宣言していただくことができました。イベント終了後も参加者の皆様とのディスカッションが盛り上がり、危うく帰りの新幹線を逃すところでした。
ワークショップのアウトプット
STEP1:まずは理想状態と、解消すべきギャップを考える
小中学校の先生が多かったため、小学校卒業時の現状と、中学卒業時でどんな状態になっていて欲しいのかという理想、その現状と理想のギャップを埋めるために必要なことを話し合っていただきました。
人との繋がりや人間関係の基礎を作るといった内容や、その1つ前のステップとして自己理解や自分を受け入れられる状態など、どんなキャリアを歩んでいくにしろ必ず必要になってくる、自己理解や他者理解の基礎を小中学校では身につけたいという意見が多く見られました。また、失敗を恐れずチャレンジしてみる気持ちやそもそも社会にはどんな生き方や職業があるのかなど、選択肢をしっかり知っていくことが大事なのではないかという意見も出てきていました。
下記のような具体的な学校での課題も見えてきていました。
- 先生の時間のなさ
- 何か計画して実行するときのやり方がそもそもわからない
- 先生が学校外の人とのつながりがなさすぎる
- 先生の自己犠牲の上に成り立つ生徒のキャリア相談やキャリア育成
- 生徒がみんなに流される受け身な状態
- キャリアから一番離れた存在が先生だから関わり方がわからない
- 生徒に点数が全てではないと言っても、結局受験では点数が求められている
- しかも、その後社会に出ると急に点数が求められなくなる
STEP2:まずは理想状態と、解消すべきギャップを考える
ギャップが見えたことで、今度はそれを解決するためのアイディアを考えていくパートに進みました。そして、アイディアが机上の空論で終わっては意味がないということで、実施するに当たってぶち当たる課題とそれを踏まえた上での解決策まで議論していただきました。
いくつか面白かったものをご紹介します。
①先生が企業で働いてみる、また、企業の人が学校で先生体験
まず子供たちにもっといろんな機会を提供したいよねという話から、もっと社会体験、色々な人の話をきく、自己理解を深めると言ったやりたいことが出てきたものの、先生としてコスト・計画・時間・そもそも何をどうすれいいかわからない、学校単体でできることの限界を感じているといったハードルが上がってきました。そこでまずは先生が色々な職種や業種の人と交流する必要があるのではないかという話があがり、その解決策として「先生が企業で働いてみる」「企業の人が学校で先生体験」をするというアイディアが出てきていました。実際に、先生が先生の立場のまま大学院に2年間通える制度がある自治体もありますし、地方公共団体の職員が企業で1年間働いてみるといったプログラム、逆にTeach for Japanなどで企業の人が1,2年間学校で働いてみるというプログラムはあるので、この交換留学制度はある程度現実的かつ有効なアイディアなのではないかと盛り上がっていました。
実際に若手の先生で企業留学したいというお話を非常に多く聞きますので、もし、先生を企業に派遣したい、もしくは先生を受け入れたいという企業がございましたらぜひともご一報ください。
②社会のリアルをちゃんと伝える
「生徒に点数が全てではないと言っても、結局受験では点数が求められている。しかも、その後社会に出ると急に点数が求められなくなる。」「先生の自己犠牲の上に成り立つ生徒のキャリア相談やキャリア育成」と言った課題に対して、先生も生徒もフリータイムを作る、地域と学校を繋げる、テストの点数に拘らない指導作りなど色々な取り組みたいことが出ていましたが、最終的に何が一番ボトルネックなのかといえば、「社会のリアルと学校での学びがリンクしていないこと」なのではないかという意見が出ていました。
地域の大人を含めて色々な立場の大人が、酸いも甘いも含めてリアルな社会をちゃんと子供たちに伝えていくこと、例えばそれは「勉強もそれ以外も両方大事、両方ないと社会では生きていけない。」と言った少々残酷なものから、「社会に出たらいろんな選択肢、いろんな環境がある、学校は本当にあくまでほんの一部の世界で無限の可能性が社会にはあるんだ。」といった未来を広げていく示唆まで、そういったリアルな社会をもっと子供たちに伝えていく活動ができたらいいよねというアイディアが出てきていました。
ここはまさに弊社が今取り組んでいる「職業講演会キッカケ」がお手伝いできる部分だと思いますので、今後取り組みを進めていきたいと考えています。
STEP3: まず最初の一歩取り組むこと
最後に参加者の皆様それぞれに取り組んでいきたいことを記載いただきました!
また次回のタイミングで具体的なアクションが現場で実行されたのか追いかけていきたいと思います。
- 自分がいろんな体験をする。
- 子供たちに自分の思いを伝える
- 子供が大人と関わる機会を増やすのはむつかしいので、自分が土日で体験をして子供に話をする。
- 進路学習のプリント等はわりと引継ぎが多いので、見直す。
- たくさんの人とつながる
- 自己分析の大切さを知ったので、まずは自分自身をもっと知ろうと思いました。
- 戦線という仕事をしている中で、生徒一人一人が自分を知れるようにその子のいいところとかタイプなどマンツーマンで話したい。
- その結果、生徒自身が自分を知り、他人からどう見られているかを知るきっかけになれたらいいなと思いました。
- 自分が興味あるものにどんどんチャレンジしていく。
- いろんな職業の人達とも話す。
- 教員として、子供たちの好きなこと、得意なことをサポートする。
- いろんな職業の人とつながり、話を聞く。
- 子供とのコミュニケーションの時間をトル。
- 今日のような会に参加して、現実の社会と昔の違いを知って、情報のアップデートをする。
- 先生ばかりがキャリア教育をするのではなく、地域のみんなで子供を育てる。
- 初等教育からキャリア教育を導入したい。
- 不登校の学生に対sh手、基礎学力を身に付け、キャリアをイメージできるトレーニングをしていきたい。
- 女子のキャリアを充実させるプログラムを展開したい。
- 他者のために働く楽しさを感じて欲しい。
実施後アンケート
イベント終了後のアンケートでは、多くの教育関係者の皆様に新しい視点や方法、具体的な手法を得られたと回答いただくことができました!
フィンランドと日本の違いに愕然としつつも、大人も子供も一緒になってキャリア教育を考えていくきっかけになったという回答が多くありとても嬉しく感じています。
- フィンランドのキャリア教育事情が予想以上でした。
- キャリア教育と一言で言っても様々な角度から学ぶことができるんだなと感じました。まずは自己理解、自己分析をすることから始める大切さを知りました。
- 改めてキャリア教育について考える良い機会でした。人によって価値観が異なるため、キャリア教育で子どもたちにどんな力をつけてあげれば良いのかを考えるワークは、とても面白かったです。
- 先生の職場体験がおもしろいと思いました
- 日本ではキャリアについて考える機会が少ないこと。大人も子どもも。
- 大人も子どもも、イキイキ働けるように、自分をもっと知る事や、日本の当たり前にとらわれすぎないことなどを広めていきたい。
- 職業体験や講話などの機会を増やすこと
- いろんな職業があることを伝える
- 学校の外からの視点でお話ししていただけたら、教師の学びにもなるし、子どもたちがたくさんの大人と出会うきっかけになるので、外から教育を支えてほしいです。
- 職業講話や職場体験などのサポートをして頂けるとありがたい。
さらに、今後もこのようなワークショップを定期的に開催することで、持続的な学びと教育実践の向上が期待されるという提案もありましたので、定期的に開催していきたいと考えています。
お問い合わせ
本記事を見て「キャリア教育を語る会」や「職業講演会を実施してみたい」と思われた先生や生徒、保護者の皆様はぜひご連絡ください!